細胞遊走・創傷治癒

ECIS®装置には、エレクトロポレーションと創傷を可能にする高磁場モードがあります。電極上の細胞のみを対象とするので、創傷を正確にコントロールできます。さらにECMタンパク質コーティングが削り取られることはなく、電流の影響を受けることもありません。

細胞遊走・創傷治癒

アプリケーション

概要

細胞遊走は発生の初期に起こり、生命の始まりから終わりまで恒常性を維持する必須プロセスです。重要な研究対象となっていますが、従来の創傷治癒試験法は再現性と正確さに欠けるため、多くの批判を浴びてきました。
ECIS®技術の登場により、創傷治癒アッセイを正確に測定できるようになり、再現が非常に簡単になりました。これはすべてリアルタイムで行われるので、ECIS®での創傷治癒アッセイは従来の創傷治癒プロセスよりも、データ収集においてはるかに大きな優位性を持っていると言えるでしょう。

スクラッチアッセイ

細胞遊走をモニターする創傷治癒アッセイは、異なる細胞や培養条件の遊走率や増殖率を推定するために、長年にわたって組織培養で実施されてきました。従来の「スクラッチ」アッセイでは、まずコンフルエントな細胞モノレイヤーを培養し、次に爪楊枝、ピペットチップ、熊手型の器具、あるいは針などでレイヤーに傷をつけ、基底レベルで吸収されたタンパク質と細胞外マトリックスを破壊します。そして、細胞が遊走して損傷部分を埋めるのを顕微鏡で経時観察します。この「治癒」は、細胞の種類や状態、創傷範囲の大きさによって、数時間から1日以上かかることがあります。

 

 

 従来のスクラッチアッセイECIS創傷治癒アッセイ
細胞遊走の測定
正確な創傷 
リアルタイムでのデータ取得 
自動化 
高い再現性 
細胞外マトリクスの保全 

ECIS®創傷治癒アッセイ

ECIS創傷治癒アッセイは、従来の「スクラッチ」アッセイに代わるものです。適当なチップで物理的に細胞レイヤーを破壊し、顕微鏡で傷を「治癒」させて細胞遊走を追跡する代わりに、電気信号を用いて傷をつけ、治癒プロセスをモニターします。ECISの電気創傷は、直径250µm のECIS電極に接触している小さな細胞集団のみを対象とし、ECIS測定とバイタル染色の両方で検証可能な250マイクロメートルの正確な傷を生成することができます。従来のスクラッチ法とは異なり、ECIS創傷治癒アッセイは、細胞外マトリックスやタンパク質コーティングに影響を与えません。

ECISはこのアッセイを自動で行えるように改良されています。通常のECIS測定では、通常1µA 以下の電流が使用されます。これは細胞には感知されないので、ECISはその測定モードにおいて、あたかも細胞の挙動を電気的に「盗み見ている」ようなことになります。電流を1mAまで上げると細胞膜に電圧がかかり、エレクトロポレーションが起こります。数ミリ秒間だけ電流を流した場合、細胞は回復しDNAを含む不浸透性の分子を細胞質に導入することができます。高電流を数秒間流すと、激しいエレクトロポレーションと局所的な加熱効果により、細胞死が起こります。ECISの傷は、250マイクロメートルの電極上の細胞のみを含むので、非常に明確に定義できます。細胞死は、ECIS測定とバイタル染色の両方で確認できます。

従来法(スクラッチアッセイ)とECIS創傷治癒アッセイの比較

顕微鏡写真は、従来のスクラッチ創傷治癒アッセイとECIS創傷治癒アッセイ後に撮影されたものです。

従来のスクラッチアッセイの顕微鏡写真は、最初の創傷後6時間(a)、12時間(b)、および23時間(c)時点でのNRK細胞です。コンフルエントなNRK細胞レイヤーをピペットの先端で削って傷つけ(面積不明・非一様なパターン)ました。図に見られるように細胞は傷の中心に向かって移動し始めるので、その移動速度を確定するために細胞を数え、比較する必要があります。

ECIS創傷治癒アッセイの顕微鏡写真は、コンフルエントなHUVEC細胞レイヤー(I)、創傷直後(II)、創傷後2時間(III)および4時間後(IV)を示しています。高電流により、微小電極に付着した生細胞は完全に死滅し(II)、TEERの上昇は、周囲の生細胞が露出した電極に移動した結果として測定(III、IV)されました(Lee、et al、2006)。

本アッセイでのECISデータ例を右図に示します。ここでは4個のウェルにBSC1細胞を播種し、コンフルエントなモノレイヤーとして増殖させ、インピーダンスを測定しました。矢印で示す時間で、ウェルのうち2つに高電界を印加し、小型電極上の細胞を傷つけ、インピーダンスを細胞が播種されていない電極の水準へと低下させました。時間とともに、これら2つの値はコントロールのレベルまで戻りました。これは、電極の外側にある健康な細胞が内側に移動して創傷箇所で再増殖し、死細胞と入れ替わったためです。このデータは再現性が高く、培養条件の変化にも反応します。

右図は、電気パルスによる創傷の24時間後に、MDCK細胞で覆われたECIS電極を示したものです。細胞が内側に移動したため、矢印で示した箇所に微妙な放射状パターンが形成されています。このアッセイは完全に自動化されており、最小限の労力で実施できます。インキュベーターの扉を開けることなく、創傷とその後の治癒過程の測定がコンピューター制御で行われます。

ECIS細胞遊走測定例

一度細胞を電気的に傷つけるとECISは通常モードに戻り、死細胞と入れ替わるように内側に移動する、隣接している健康な細胞を直ちに追跡することができます。従来このような測定は、顕微鏡検査や研究者の定量化など、多大な労力をかけて実施されてきました。ECIS 創傷・細胞遊走アッセイは、最小限の労力で完全に自動化されています。インキュベーターの扉を開けることなく、コンピュータ制御により、細胞の創傷治癒とその後の治癒過程の計測を行うことができます。

ECIS 電気フェンスアッセイ

Applied Biophysics社は、細胞遊走速度を測定するために、「電気フェンス」と呼ばれる新しいインピーダンスベースの技術を開発しました。本手法は電極の周囲にコンフルエントレイヤーを形成しながら、電極上で細胞が実際に成長するのを防ぐという点で、創傷治癒アッセイとは異なります。「フェンス」を作動させると一連の高電界パルスが印加され、細胞が電極に付着して増殖するのを阻止します。オフにすると、電極周囲のコンフルエントレイヤーの細胞は、フェンスによって残された空きスペースに移動します。

エレクトロポレーション

ドラッグデリバリー・遺伝子導入

電気式細胞融合

蛍光組織染色・in situ HCR

細胞分離

1細胞回収・マイクロダイセクション

細胞凍結

細胞・微生物培養 (解析/計数/伸展/灌流)

In vivo 超音波イメージング

卵振動培養